ジョナス・メカスの映画の中で「きのこ狩りに…」というフレーズがあり、そのことが脳裏に残っていたものの、リトアニアを旅し始めたばかりの私は、まだきのこ狩りの魅力について知る由もなかった。リトアニアに通いはじめて三年目の夏のあるの晩、ホストファミリーのクリスティヨーナスと話していると、きのこ狩りの話題になった。どうやらリトアニア人は本当にきのこ狩りをするらしい。メカスの映画で言っていた通りだ。そんなことを思いながら呑気に相槌を打っていると「きのこ狩りに行ったことがないのか?」と驚いた顔で聞かれた。日本で一度か二度はあるけれど、リトアニアでは今まで一度も行ったことを伝えると、「どうしたら君をきのこ狩りに連れて行けるか考えている。」と言って真剣な顔つきで考え出した。きのこ狩りをしたことがないことが一大事のようだ。熟考の末、「両親の家に泊まって、明日の朝に近くの森に行こう。」といって、早速その夜クリスティヨーナスのご両親が住むガーデンハウスを訪ねることになった。
突然の訪問にも関わらず、温かく出迎えてくれるクリスティヨーナスのご両親。急な来客に焦ることなく優しいのは、クリスティヨーナスのご両親だけではなく、リトアニア人らしい気質にちがいない。その後もあらゆるお宅に予告なく訪ねてきたが、どの家でもすぐに食事や寝床を用意してくれる。日本もかつてはそうだったのかもしれない。今でもそういう家庭もあるのだろうが、慌ただしい都会の暮らしの中では中々歓迎されないことのように思う。
その日の朝にクリスティヨーナスのお父さんが採ってきたというアンズ茸のパスタをつくってもらう。クリスティヨーナスのお父さんもきのこ狩りが日課で、その朝もたくさんの収穫があったそうだ。きのこ狩りには早起きが必須とのことで、早々に就寝する。夕方からの予想外の展開の連続に頭が冴えわたるも、明日に備えて床に着いた。居間に用意してもらったソファベッドの上には、クリスティヨーナスの二人の息子たちの誕生を記念した麦わらのオーナメントが二つ並んでかかっていた。家庭の中にあまり見られなくなったソダスをこうして慈しんでいる人もまだわずかにいるのだ。
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